Arisaema griffithii(コブラテンナンショウ)

Arisaema griffithii Schott
Photo by Basu Dev Neupane
Syn. Aroid.: 26 (1856)
-synonym-
Arisaema griffithii var. pradhanii (C.E.C.Fisch.) Pradhan in Himalayan Pl. J. 4(9-10): 16 (1986)
Arisaema griffithii var. verrucosum (Schott) H.Hara in Bull. Univ. Mus. Univ. Tokyo 2: 340 (1971)
Arisaema hookeri Schott in Gen. Aroid.: 6 (1858)
Arisaema hookerianum Schott in Oesterr. Bot. Wochenbl. 7: 334 (1857)
Arisaema pradhanii C.E.C.Fisch. in Bot. Mag. 159: t. 9425 (1936)
Arisaema verrucosum Schott in Oesterr. Bot. Wochenbl. 7: 341 (1857)
本種はネパール-インド西ベンガル州-チベットの高地に自生する。
かつて日本でも栽培が試みられていたが、長期維持に成功/繁殖に至った例は確認できない。
Sect. Arisaemaに分類される本種だが、葉の色合いやその大きさが見事である。
前述の通り、雪の残るヒマラヤ高地に自生し、残雪の中から出芽する。
仏炎苞舷部は著しく湾曲し、また横幅が広く、さながら“コブラ”のようである。
付属体は前屈し、長く伸びる(個体差が激しく、伸びない場合もある)
仏炎苞は黒褐色で淡緑色の網目模様だが、少数ながら緑色の個体や短褐色の個体なども確認されている。

緑色の個体
Photo by Basu Dev Neupane

残雪の中から芽を伸ばすA. griffithii
Photo by Basu Dev Neupane
Synopsis Aroidearum Complectens Enumerationem Systematicam Generum et Specierum Huju Ordinis:26 (1856)
最後に、画像を提供していただいたBasu Dev Neupane氏に感謝いたします。
Arisaema sinii

Arisaema sinii
Yongzhou, Hunan, S.China
Arisaema sinii K.Krause
Notizbl. Bot. Gart. Berlin-Dahlem 10: 1047 (1930)
A. siniiは中国中南部を中心に分布するSect. Franchetianaに属する一種である。
synonymはなく、1930年に記載されている。
葉は1〜2枚、小葉は3枚、全体は緑色で安定。
花序付属体は棍棒状で薄緑色、仏炎苞舷部は大きく開き、口辺部はやや外側に開出する。

Sect. FranchetianaとSect. Sinarisaemaは開花後、結実する際に花序が下方向に曲がる。

仏炎苞は葉より低いか同じ高さで開き、仏炎苞は葉よりやや早いか同じタイミングで開く。
実態があまり明らかになっていなく、またマイナーな種であったが、今回入手し開花させたことで実態が掴めた。
なお小葉の基部は癒着することがあり、他に葉のツヤの具合や比率、仏炎苞の形状や花序付属体の形状にややバラツキがあるようである。
しかし概ね似通っており、誤同定することは考えにくいだろう。
Arisaema mairei (四川白花姫テンナンショウ)

Arisaema mairei
S. Schuan
Arisaema mairei H.Lév.
Cat. Pl. Yun-Nan: 10 (1915)
-Synonym-
・Arisaema maireanum Engl. in Pflanzenr., IV, 23F: 161 (1920)
・Arisaema wumengense H.Li, Q.T.Zhang & L.S.Xiein Kew Bull. 55: 421 (2000)
中国はSichuan南部、Yunnanの1500m〜2000m付近の湿った草地に分布する特徴的な種。
なお、四川白花姫テンナンショウとして流通しているのは本種である。A. saxatileの学名が併記されることも多いが、別種であり、これは誤りである。
仏炎苞は白色で安定、まれに緑色がかることもある。
仏炎苞は葉と同じかそれより高い位置で展開する。
根茎は球形で、よく分球する。
葉は1〜2枚、小葉は5〜7枚で掌状複葉。
小葉は中央を除き無柄、中央の小葉は有柄であることがあるが、他の基部は癒着することもままある。
偽茎はやや発達し、偽茎開口部から花柄を出す。
種内変異であるが、四川省南部の個体群は仏炎苞開口部口辺が外側に巻き、舷部は顕著に垂れる。雲南省の個体群は舷部はやや立ち上がり、開口部口辺の巻きはやや弱いが、明確に識別することは困難。なお、トップの画像は四川省南部の個体である。以下は雲南省の個体。

Arisaema mairei
Kunming, Yunnan
国内で広く流通する個体は四川省南部の個体群が過去山採りで入荷していたものと思われる。
A. saxatile、またやや類似するA. aridum、A. yunnanense、A. prazeriなどとは仏炎苞が緑色で安定しているほか、分布域、小葉の枚数/形態などからはっきりと識別できる。
モモイロテンナンショウ-Arisaema candidissimum-
モモイロテンナンショウ
Arisaema candidissimum W.W.S
Notes Roy. Bot. Gard. Edinburgh 10: 8(1917)

Arisaema candidissimum
Lijiang, Yunnan
Sichuan, Xizang, Yunnanに分布する白花〜桃色の仏炎苞の一種。
根茎はやや扁平な球形、葉は1〜2枚、小葉は3枚。未成熟では単葉、時に単葉のまま開花することがある。
雌雄偽異株、ごくまれに両性花をつけることがあるが、イレギュラーである。
仏炎苞は葉より低いか同等程度の高さで展開し、偽茎は発達しない。
自生地では2000〜3000mの高地のやや日当たりの良い草地や林床に生育する。
さて、本種はA. franchetianumと交雑することがある。
以下の画像が交雑個体である。なお、分布域が重なっているのはA. franchetianumであるが、A. fargesiiとの交雑とする見方もある。


A. candidissimum × A. franchetianum
(natural hybrid )
Liangshan, Sichuan
A. fargesiiとA. franchetianumに関しては別項する。
交雑個体では大型化しやすく、また仏炎苞の白条がはっきりとし、開口部がやや狭く付属体が顕著に伸び前屈する。
交雑していないと思われる個体群では仏炎苞舷部が立ち上がるかやや斜め程度で、開口部を覆うことはない。また交雑個体に比較し付属体は棒状で、前屈せず伸び上がらない。
なおいずれも仏炎苞の色彩にかなりの変異があり、緑〜白〜赤〜褐色まで確認している。
日本国内で流通している個体は過去に入荷した山採り品の中から”桃色”を選別したもので、自生地では白色もかなりの割合存在すると聞いている。

Arisaema penicillatum

Arisaema penicillatum
Hong Kong
Arisaema penicillatum N.E.Br.
J. Linn. Soc., Bot. 18: 248 (1880)
-Synonym-
・Arisaema laminatum Benth. in Fl. Hongk.: 342 (1861), nom. illeg.
・Arisaema matsudae Hayata in Icon. Pl. Formosan. 9: 149 (1920)
分布はGuangdong, Guangxi, Hong Kong, Hainan, Taiwan。
TaiwanのものはA. matsudaeとされていたが、現在は本種のシノニムとされている。

Arisaema matsudae Taiwan
photo by Ryo
上記画像は台湾産の個体。
また、Malay-Borneoに分布するA. laminatumにもよく似るが、中国にて記録のあるA. laminatumは 本種のシノニムとされている。前述の分布を示すA. laminatumに関しては、筆者は観察していないためなんとも言えないものの、シノニム関係となっている。
A. matsudae、A. laminatumはやや雰囲気が異なるようにも感じているが、現在は上記通り一種にまとめる見解が主流である。
根茎はやや歪な球形で、直径は1-3cmほどとかなり小さい。葉は1〜2枚で、栄養状態により変化する。小葉は安定して3枚、中央の小葉は葉柄がわずかにあるが、左右のものには見られない。
仏炎苞は緑色で安定するが、黒い線状の模様が入るものや、まったく緑色のもの、また白く窓状に透けるものなど変異に富む。
付属体には少々の分岐が見られるものの、こちらも変異に富む。全体としては線形と言えよう。
さて、画像1、2枚ともに非常にA. guangxienseとされている一群に似ていることに気づく方も多いだろう。事実、Guangxiを中心に分布するこのグループは未だ未整理であり、今後細分化されてゆくかもしれない。

Arisaema guangxiense
Chongzuo, Guangxi
またJ. Murata & Su-Gong Wu (2003)にてA. lihengianumと同時に記載されたA. lidaenseは本種のシノニムであるA. laminatumに近縁と予想されていることから、こちらも関係が深いものと思われる。
今後の展開が楽しみなグループである。
なお、A. guangxienseは独立種であるが、本種に比較し派生的形質を欠くため本項にまとめておく。
Arisaema mildbraedii

photo by Nao Yoneda(MARTIAL PLARTS)
in Mt. Ruwenzori, Uganda
Arisaema mildbraedii Engl.
G.W.J.Mildbraed (ed.), Wiss. Erg. Deut. Zentr.-Afr. Exped., Bot. 2: 55 (1907-1908 publ. 1910)
-Synonym-
・Arisaema bequaertii De Wild. in Rev. Zool. Bot. Africaines 9: 25 (1921)
・Arisaema masisiense De Wild. in Rev. Zool. Bot. Africaines 9: 26 (1921)
Burundi, Zaire, Kenya, Uganda, Rwandaに分布するアフリカ産種。
高さは1.2m程度と大型の種。根茎は半球形(いわゆる温帯産の多くと似ている)
葉は1〜2枚、偽茎は時に赤褐色の斑点を生じる。
小葉は通常成熟した株では7〜9枚前後、掌状につく。
花序は葉と等しいかそれ以上。仏炎苞は緑色で安定し、舷部は先端が時に長く伸び、付属体は細長い棒状から棍棒状で緑白色。
度々雌雄同株となるようだ(詳細未確認)
Mt. Elgon, Kenyaに見られるややコンパクトにまとまりやすい個体群や、A. ruwenzoricumに類似する個体群などもあるようで、亜種関係にまとまる可能性が示唆されている。
マムシグサ-Arisaema japonicum-

Arisaema japonicum Blume
Rumphia 1: 106 (1836)
-Synonym-
・Amidena japonica (Blume) Raf. in Fl. Tellur. 4: 15 (1838)
・Arisaema serratum f. blumei Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 15: 129 (1901)
・Arisaema serratum var. blumei (Makino) Engl. in Pflanzenr., IV, 23F: 206 (1920), nom. superfl.
・Arisaema serratum var. japonicum (Blume) Y.Yabe in Enum. Pl. S. Manchuria: 22 (1912)
・Arisaema serratum f. japonicum (Blume) Makinoin Ill. Fl. Nippon: 774 (1940), nom. superfl.
・Arisaema koshikiense Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 49: 423 (1935)
・Arisaema pseudojaponicum Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 43: 535 (1929)
・Arisaema pseudojaponicum f. serratifoliumNakai in Bot. Mag. (Tokyo) 43: 535 (1929)
・Arisaema takesimense Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 43: 538 (1929)
・Arisaema yakushimense Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 49: 497 (1935)
本種はテンナンショウ属の最も代表的な種であると筆者は認識しているが、広義にはテンナンショウ属の全体を指すことがある。
トップの画像は高知県産の栽培個体である。野生個体や他産地の画像は未だ整理が終わらず、また分類学的立ち位置の不明なものも多いため、整理を終えてから掲載しようと思う。
なお、広義のマムシグサに含まれるコウライテンナンショウ(A. peninsulae)とカントウマムシグサ(A. serratum)に関しては長く長くなってしまうため、また別の記事にまとめることとする。
分布は四国九州からトカラ列島にかけて、また韓国鬱陵島とされている。
ちなみに屋久島や甑島のものは概ね褐色で白条が多数目立つ。それぞれヤクシマテンナンショウ(A. yakushimense)、コシキジマテンナンショウ(A. koshikiense)とされていたが、現在は両者とも狭義マムシグサのシノニムとされている。
基本的な形態は以下の通りである。
1. 基本的に早咲き型(葉の展開より花が先に開花する)
2. 仏炎苞の舷部の内面が平滑
3. 花は3月下旬に咲き始め、5月初旬には終わりを迎える(例外あり)。
4. 付属体(仏炎苞に囲まれた、真ん中の棒)は淡緑色で、棒状(例外あり)。
5. 葉は2枚、小葉は9〜17枚(例外あり)。
前述のカントウマムシグサとコウライテンナンショウに比較すれば、これでもまだ分かりやすいものであろう…
とにかく本種は、
1. 1個体だけではなく、周辺の個体を出来るだけ多く確認する。
2. 1個体が上記の特徴をすべて満たしていなくても、周辺の個体の特徴と総合して検討する。
3. カントウマムシグサ、コウライテンナンショウの可能性を排除する。
カントウマムシグサとコウライテンナンショウ、この2種と明確に区別できる点は、仏炎苞内面の細脈の有無である。この2種は細かい隆起した脈が存在するが、狭義マムシグサにはその際脈がなく平滑である。

↑舷部内面と付属体(栽培個体・高知)
以下に狭義マムシグサの変異に関し、筆者の確認したものをまとめる。
四国のものは概ね緑色で安定していて、仏炎苞舷部先端がやや細く伸びる。
これらはホソバテンナンショウに形態が似ている。小豆島や沖ノ島のものは仏炎苞がやや盛り上がり、白条が広がって目立ち、付属体は若干の黄色味を帯びる。一方でブナ帯の分布するものは葉がしばしば1枚で花期が遅く、白条がほとんど目立たないものがあるものの、これらは変異に富み、低地のものへ連続性を持っているものである。
九州のものは緑〜紫褐色までの変異が認められる。コシキジマテンナンショウとされた形態のもの、またヤクシマテンナンショウとされた形態のものも九州各地で見られる。ただし、屋久島の山地上部にみられるヤクシマテンナンショウ型にものは矮性で小葉の数が多く、細く葉軸があまり発達しないもので、これら屋久島の集団はやや独立している傾向にあると言えると考える。
またヒトヨシテンナンショウ(A. mayebarae)は仏炎苞が暗紫褐色で舷部が盛り上がるがそれ以外は狭義マムシグサと同じ形態を持ち、九州南部に広く分布し、狭義マムシグサと混生し比較的容易に交雑することもあることから、本種は狭義マムシグサから独立したものと思われる。
といった具合に羅列したが、四国、九州、トカラ列島では比較的普通である。
九州に分布する遅咲き型の広義マムシグサの1群は本種と異なるもので、未だ分類学的立ち位置がはっきりせず、コウライテンナンショウとするか、カントウマムシグサとするかで見解が割れている。また四国地方にもコウライテンナンショウによく似た種が分布しており、今後の詳細な研究が待たれる。