テンナンショウいいよね!

あぁもうテンナンショウ最高や…

マムシグサ-Arisaema japonicum-

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マムシグサ

Arisaema japonicum Blume

Rumphia 1: 106 (1836)

 

-Synonym-

・Amidena japonica (Blume) Raf. in Fl. Tellur. 4: 15 (1838)
・Arisaema serratum f. blumei Makino in Bot. Mag. (Tokyo) 15: 129 (1901)
・Arisaema serratum var. blumei (Makino) Engl. in Pflanzenr., IV, 23F: 206 (1920), nom. superfl.
・Arisaema serratum var. japonicum (Blume) Y.Yabe in Enum. Pl. S. Manchuria: 22 (1912)
・Arisaema serratum f. japonicum (Blume) Makinoin Ill. Fl. Nippon: 774 (1940), nom. superfl.

・Arisaema koshikiense Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 49: 423 (1935)
・Arisaema pseudojaponicum Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 43: 535 (1929)
・Arisaema pseudojaponicum f. serratifoliumNakai in Bot. Mag. (Tokyo) 43: 535 (1929)
・Arisaema takesimense Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 43: 538 (1929)
・Arisaema yakushimense Nakai in Bot. Mag. (Tokyo) 49: 497 (1935)

 

本種はテンナンショウ属の最も代表的な種であると筆者は認識しているが、広義にはテンナンショウ属の全体を指すことがある。

トップの画像は高知県産の栽培個体である。野生個体や他産地の画像は未だ整理が終わらず、また分類学的立ち位置の不明なものも多いため、整理を終えてから掲載しようと思う。

 

なお、広義のマムシグサに含まれるコウライテンナンショウ(A. peninsulae)とカントウマムシグサ(A. serratum)に関しては長く長くなってしまうため、また別の記事にまとめることとする。

 

分布は四国九州からトカラ列島にかけて、また韓国鬱陵島とされている。
ちなみに屋久島や甑島のものは概ね褐色で白条が多数目立つ。それぞれヤクシマテンナンショウ(A. yakushimense)、コシキジマテンナンショウ(A. koshikiense)とされていたが、現在は両者とも狭義マムシグサのシノニムとされている。

 

基本的な形態は以下の通りである。

 

1. 基本的に早咲き型(葉の展開より花が先に開花する)
2. 仏炎苞の舷部の内面が平滑
3. 花は3月下旬に咲き始め、5月初旬には終わりを迎える(例外あり)。
4. 付属体(仏炎苞に囲まれた、真ん中の棒)は淡緑色で、棒状(例外あり)。
5. 葉は2枚、小葉は9〜17枚(例外あり)。

 

前述のカントウマムシグサとコウライテンナンショウに比較すれば、これでもまだ分かりやすいものであろう…

 

とにかく本種は、

1. 1個体だけではなく、周辺の個体を出来るだけ多く確認する。
2. 1個体が上記の特徴をすべて満たしていなくても、周辺の個体の特徴と総合して検討する。
3. カントウマムシグサ、コウライテンナンショウの可能性を排除する。

 

カントウマムシグサとコウライテンナンショウ、この2種と明確に区別できる点は、仏炎苞内面の細脈の有無である。この2種は細かい隆起した脈が存在するが、狭義マムシグサにはその際脈がなく平滑である。

 

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↑舷部内面と付属体(栽培個体・高知)

 

以下に狭義マムシグサの変異に関し、筆者の確認したものをまとめる。


四国のものは概ね緑色で安定していて、仏炎苞舷部先端がやや細く伸びる。
これらはホソバテンナンショウに形態が似ている。小豆島や沖ノ島のものは仏炎苞がやや盛り上がり、白条が広がって目立ち、付属体は若干の黄色味を帯びる。一方でブナ帯の分布するものは葉がしばしば1枚で花期が遅く、白条がほとんど目立たないものがあるものの、これらは変異に富み、低地のものへ連続性を持っているものである。
九州のものは緑〜紫褐色までの変異が認められる。コシキジマテンナンショウとされた形態のもの、またヤクシマテンナンショウとされた形態のものも九州各地で見られる。ただし、屋久島の山地上部にみられるヤクシマテンナンショウ型にものは矮性で小葉の数が多く、細く葉軸があまり発達しないもので、これら屋久島の集団はやや独立している傾向にあると言えると考える。
またヒトヨシテンナンショウ(A. mayebarae)は仏炎苞が暗紫褐色で舷部が盛り上がるがそれ以外は狭義マムシグサと同じ形態を持ち、九州南部に広く分布し、狭義マムシグサと混生し比較的容易に交雑することもあることから、本種は狭義マムシグサから独立したものと思われる。

 

といった具合に羅列したが、四国、九州、トカラ列島では比較的普通である。

九州に分布する遅咲き型の広義マムシグサの1群は本種と異なるもので、未だ分類学的立ち位置がはっきりせず、コウライテンナンショウとするか、カントウマムシグサとするかで見解が割れている。また四国地方にもコウライテンナンショウによく似た種が分布しており、今後の詳細な研究が待たれる。